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2008年02月10日

俺のガキの頃の自慢の一つで、これは結構ゆずれないというものが『ベーゴマ』。勝敗に、自分のベーゴマを賭けるというルールは、しらずしらずガキの男心を揺さぶった。
ベーゴマを通して、現在の俺の原点がいくつか生まれている。
一つは、「(絶対に)負けない」ということ。
もう一つは、負けないための創意工夫。

当時、俺が住んでいた地区には、町工場がひしめき、ありとあらゆる好奇心をそそる材料や道具が転がっていた。
まず、「ビー玉工場」。もちろん、ビー玉はB玉で、要するにA玉の「はつり」品。捨てられたビー玉が山になっていて、拾い放題。まさに宝の山。
そんな中で、店舗用什器を作っている工場(たしかアマモリさんとかヤマモリさんという名の製作所)では、鉛の棒の端材が沢山捨てられていた。ステンレスのパイプなどを溶接するためのハンダ棒のたぐいと思われる。それを、仲良くなった工場のおじさんからもらった。おじさんからもらえたのは鉛の木っ端だけではない。

「鋳造」の技術である。

家の裏にあった「たんぼ」(もちろん他所様のもの)のいい場所から採取した土をきれいにならして、表面に物体を押し付ける。物体を取り除いて出来た穴に、融けた鉛を垂らす。

そう、俺の生まれて初めての鋳造経験は、ベーゴマだった。

黒い表土の関東ローム層は、少し掘ると粘土質の土が増えてくる。出来るだけキュっとした型を作るためには、きめの細かい土が必要だ。
さらに、強いベーゴマを作るためには、型を取られるべき「強いベーゴマ」が必要である。これは、どうするのか。
市販されているベーゴマを自分で改造して、強い形にするのだ。
今でも売られているベーゴマは、すべて鉄製。上面に漢字やアルファベットがレリーフ状に刻まれている。俺はなぜだか、「K」という文字と「R」という文字のものだけを集めていた。文字がレリーフになっているので、多少、バランスに関係していたと思われる。とにかく、俺の中では「K」か「R」が強かった。
改造のポイントは、背の低さとお尻の丸さ、外側の角の立て具合。
ベーゴマは、バケツに帆布をかぶせ紐で縛って少し弛ませ、その上めがけてベーゴマを投げるように回し入れて、相手のベーゴマを弾き飛ばした方の勝ち。相手は1対1の場合も有るし、数人の場合も有るが、とにかく低く回り込んだ方が強い。だから、背が低い方がいい。お尻は限りなく丸い方が、コマ自体が弧を描いて場の中心に潜り込んでいく。ただし、センターがずれるとアウト。低く低く滑り込んだら、鋭く斜めに削り落とした肩で相手のコマを弾き出す。その上、重ければもっといい。削ると軽くなるので、上に5円玉貼ったりした。1円玉だと軽すぎる。
そうして歴戦をかいくぐった強いベーゴマを元に、鉛のベーゴマを鋳造した。
砂型ならぬ粘土型から鋳造されるベーゴマは、結構失敗を繰り返しながらも、いくつかは最強のベーゴマとなる。もちろん、鋳型から出したコマをさらにチューニングした。
重くて、低くて、鋭い鉛のベーゴマは無敵だ。ただ、すぐに磨耗してしまう弱点が有った。だから、ここぞの大勝負の時だけ大事にポケットから取り出し使った。
俺らは、戦利品のベーゴマを缶カラに入れて保管し、缶からごと持ち寄って遊んだ。缶カラは、これもなぜだか、スキムミルクのL缶だった。俺は、ベーゴマでいっぱいのスキムミルクの缶を3缶は保有していた。中には、お茶の缶とか、その他の箱のやつも参戦していた。そういう奴は、缶の種類でよそ者だとわかった。もっとも、大抵が同じ小学校の連中なので、缶カラを見なくても狭い地区の同じ仲間かそうでないかぐらいは分かっていたのだが。

ベーゴマを回すのに、ひもの先に二つの結び目を作る。
この作り方にも流儀が有って、ポピュラーなのは端を少し残して1つ目の結び目を、そこから1cmくらい離れたところのもう1つを作る方法。安定して回せる。
俺がやっていたのは、一番端に1つ目を結びお尻に当て、ひもを一度ベーゴマの上を渡らせてお尻にも度ってきたところにもう1つを作るという方法。この方が、ベーゴマが回りはじめて最後にひもがベーゴマから離れる瞬間に、さらに加速を与えられる。ギュンと!
この結び方=回し方が出来るやつは、仲間にもあまりいなかった。

鉛のベーゴマを使用していいのは、俺らのルールだ。
辻を越える度、角を曲がる度ごとにその地区の暗黙の細かく異なったルールが存在した。
違う地区に遠征に行ったら、その地区のルールに従わなければならない。
ガキどおしのルールは、その時の人間関係の勢力図で簡単に塗り替えられたりもした。
だから、鉛のベーゴマに関する使用許可及び使用方法は、俺が作った俺らの「江戸川区本一色六番地(現在は町名変更で本一色一丁目2番)限定」ルール!

こうして俺の中に、「絶対に負けない!」人生観が芽生えていた。


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